第12話 わがままエイリアン(中編)

 沖へ漕ぎ出でるとすぐ、潮の満ち引きだけで消えてしまうんじゃないかというくらいの島に、これまた小ぢんまりとした崩れかけの砦が建っているのが遠目でもしっかりと確認できた。

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 桟橋に舫綱でボートを止めると、その近くに砦の入り口と思しき鉄製の門。
うっすらと錆の浮いた門は固く閉じられていたが、近くにあった同じくレバーを見つけ回転させると見かけとは裏腹に、滑るように開いた。
思えば、この門が軋んだ音も立てずすんなりと開いた時点で漏れ様は疑念を抱くべきだった。



中へ入って早速探索をはじめると、片隅にハゲちゃびんのおっさんが蹲っていた。
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漏れ様「お、おい、大丈夫かオッサン」
既にやられちゃったかと思い駆け寄ると、おっさんは何やらブツブツと呟いている。
おっさん「きた・・・」
漏れ様「きた?何が?」
敵か?と思い周囲を見回す。
おっさん「4-12だ・・・」
漏れ様「は?」
おっさん「次のレースだよ!4-12だ!4-12が確実にくる!!
     おりてきたァアアアアアア!!1!!!
     競馬の神が俺の中に降りてきたァアアアアアアア!1!!1
     誰カ俺ヲ止メテクレェエエエエエエエエエエエ!!!!!1」
なにやらKOUFUNしながら自分の頭をペチペチたたいて喚きだした。
漏れ様「じゃ、お望みどおり」
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背後に回ってフェイトーザばりのブラジリアンハイキックを延髄に叩き込むと、おっさんはあっけなく昏倒した。
おっさん「な、何をするのかねキミは?」
意外とすぐにおっさんが起き上がり、抗議の声を上げる。
漏れ様「いや、止めろって言うから。」
おっさん「心臓まで止める気かっ!」
ダチョウ倶楽部のようにおっさんは激昂したが漏れ様は気にも留めない。
漏れ様「そんな事よりあンたがAleronさん?」
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Aleron「いかにも私がAleronだが、どこかで会ったかね?
     君のような珍奇な知り合いだったら忘れる筈は無いと思うが。」
漏れ様「漏れ様が珍奇かどうかはともかく、あんたの奥さんに頼まれてね。
    で、金貸しのオークがココにいるって言ってたからここまで来たってワケさ。
    ときに大事な剣とやらは見つかったのか?」
Aleron「何?剣?そんなものはウソッパチさ。キミはKurdanに担がれたんだよ。
    ここは狩場で、我々は獲物なのさ。」
おっさんがフゥーヤレヤレ、といった感じで溜息をつきながら首を横に振った。妙にムカつく。
漏れ様「狩場?獲物?どういうことなん・・・?」
なんとなく察しはついたが、思わず声に出た。
振り返って入ってきた門を見ると何時の間にかぴったりと閉じられていた。
入ってから一定時間経つと自動的に閉まる仕組みになっていたんだろうか。
無駄だとは思いつつも押したり引いたりしてみても、門はビクともしない。
Aleron「あいつは高利貸しのかたわら、こうして返済の滞った人間を
     『獲物』としてこの島に送り込んでいるのさ。
    世の中には大金を払ってでも人殺しがしたい奴等がいてね、
    そいつらは人買いで、Kurdanはいわば女衒中継のようなものだな。
    勿論「狩人」どもはどいつもそこそこ腕が立つしロクな奴じゃない。
    金も持ってるから表沙汰にもならない。」
漏れ様「クソッ!道理で話がデキすぎてるとは思ったんだ。」
依頼人が別れ際に言った"Kurdanを信用しないように"の言葉が今更ながら思い出され、己の迂闊さに漏れ様は拳を叩いて切歯した。
Aleron「あああそんな事よりも早く帰らないと次のレースの投票締め切り
     終わっちまうよぉおおお!!1!!!1!!」
この期に及んでまだ馬券買うつもりかこのオッサン。
漏れ様「ああ、だったらここから早く出ないとな。ここから出る方法はわかってるのか?」
Aleron「まず門を開けるには、砦の中の鍵のかかった部屋にある
    レバーを動かす必要がある。
     そしてその鍵は砦の中にいる狩人の誰かが持っている。
     つまり彼等を倒して鍵を手に入れる以外、ここから出る術は無いという事さ。」
漏れ様「そうか・・・それならやるしかないだろな。」
まあ、砦の中にいる「狩人」とやらは腕が立つといっても人間だろうし、オブリビオンゲートの中の魑魅魍魎に比べれば多少はマシな相手だろう。
漏れ様「じゃ、行こうか。おっさんも何かそこら辺の武器拾ってついてきな。」
良く見れば、あっちこっちにこれまでの「獲物」と思しき白骨と、それが使っていた武器防具が転がっている。
つまり、塔の中に入らずとも、ここに留まっていたらいずれは向こうからやってきて嬲り殺しにされるのだろう。
ところがおっさんはにべもなくそれを拒否した。
Aleron「断る。私は生まれてこの方戦ったことなど無いんだ。
     ここでキミが鍵を持って帰ってくるのを応援しながら待ってるよ^^」
漏れ様「(ダメだこいつ・・・早くなんとかしないと・・・)」
もうおっさんはアテにならんので、漏れ様は意を決して砦の扉の方へ歩いていった。
Aleron「なるべく急げよー。次のレース当たったら1割あげるから」
漏れ様「いらんわっ!」
近くにあったTanMugをひっつかむなり、漏れ様はおっさんの頭部めがけて投げつけた。
Aleron「フフフ・・・そっちは残像だよ」
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眉間にTanMugが的確にヒットして再び昏倒したおっさんをその場に残し、漏れ様は砦の中へと踏み込んでいった。



塔の中では狩人が獲物を今か今かと待ちかねていた。
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彼は「ニ番目」の鍵を持つ狩人である。
この砦の中には三人の狩人がおり、それぞれが鍵を所持している。
砦の門を開けるレバーがある部屋の鍵は三番目、最後の狩人が持っている。
そこへ辿りつくには二番目である自分の持つ鍵が必要であり、また自分の所へ辿り着くには最初の狩人の鍵が必要、という仕組みになっている。
つまり獲物がこの砦から出るには都合三人の狩人を倒さなくてはいけないことになる。

二番目の彼は格別に剣技を学んだことも無い、単なる快楽殺人者だった。
獲物がそこそこの腕を持っていた場合、最初ではお互い万全の状態で戦わなくてはいけないし、三番目では辿りつける者が少ない。
だからこそ、彼は二番目を選んでいた。一人目に勝利し気が緩んだ、或いは手負いの獲物を物陰から闇討ちする。
それが彼のやり方だった。
しかし今回は待てど暮らせど獲物がやってこない。
その証拠に獲物や一番目の狩人の悲鳴どころかさっきから物音一つしない。
どんな隠密裏に殺しても、一瞬でも人間の声は上がるし、この空間では密殺する必要も無い。
むしろ折角の獲物は散々いたぶってから殺すのがそれぞれの狩人に共通した性癖である。
勿論、たまにいつまでも物怖じしてスタート地点から出発しない獲物もいる。
そうなれば、三人で嬲り殺しにすることになるから、楽しみも三等分されてしまう。
かといって抜け駆けをしようにも砦の構造上、どうしても「一番目」の狩人との遭遇は避けられない。
もしかしたら、「一番目」が抜け駆けをしているかもしれないのだ。

そろそろ我慢の緒が切れかけていたところだった。


???「ぬわ―――――――っ!!」
狩人2「パパス?いや、今のは最初の狩人の声・・・」
第一の狩人があんなみっともない悲鳴を上げるような殺され方をしたのなら、
今回の獲物はかなりの使い手なのかもしれない。
しかし彼の気分は逆に高揚した。
一人目の狩人を楽に撃退したところできっと油断していることだろう。
剣に自信があればこそ、生まれる隙も大きい。
本来、真正面から戦っては勝ち目の無い手錬の急所を一刺しして絶命させる。
なんという快楽だろう。
都合の良い思考をめぐらせながら、彼はいそいそと物陰に隠れ息を潜めていた。


・・・


・・・・


・・・・・来ない。


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不審に思って物影から首だけを出して通路の様子を伺う。
通路には人影も無く、悲鳴の後は足音ひとつ聞こえてこない。
様子を見てこようかと身を乗り出した時。



ぽたり


何か液体が自分の頭の上に落ちた。
外で雨でも降り出したんだろうか。
古い砦だから雨水が天井から漏ることはざらにあった為、
狩人は別段気にすることも無かった。
再び物陰に隠れようとした。


べちゃっ


今度は先ほどよりも多めに落ちてきたのか、まるで鳥の糞のような音を立てて頭の上に落ちた。
狩人2「!?」
その異様な感触に、手で液体を拭ってみた。

ぬるり

液体は雨水ではなく得体の知れない粘液だった。
狩人2「な、なんだコレは?」
思わず狩人2は天井を仰ぎ見た。
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???「あおお―――――っ!1!!!1」
FortGrief最奥の通路に喘ぎ声悲鳴が響いた。
しかし彼は微動だにせずじっと腕を組み、目を閉じていた。
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このオークは三番目の鍵を持つ男、つまり最後の狩人という事になる。
幼き頃から武芸を嗜み、また種族の特性もあってか今ではひとかどの剣技を持っている。
そしてそれはいつか「生きた人間を斬ってみたい」という歪んだ欲望へと変わっていった。
が、彼はオークながらも確固たる地位の貴族でもあった。
世間体のために日々その衝動を押さえ込みながら「珍しく温厚なオーク」の仮面を被り過ごしてきた。
しかし剣の腕が上達すればするほど真剣で人を斬ってみたい欲求は強まり、度重なる我慢は爆発寸前になっていた。
そんな時、それを見透かしたように声をかけてきたのがKurdanだった。
以来、彼はこの砦の中にいるときだけオークの本性を剥き出しにする。
現に何人もの「獲物」をむごたらしく殺してきた。
そして存分に殺人を楽しんだ後は何事も無かったのように自宅に戻り、人格者の仮面を再び被る。
人々はオークなのに穏やかで優しい奴だという。
もっとも、見る人間が彼を見ればすぐにわかる。「こいつは人殺しだ」と。
ちなみに、そんな手の込んだ細かい設定を持ちながらも、彼の出番はこの一話だけで終わりである。
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狩人3「そーいう事を言うなよ!」


・・・ともかく狩人2が倒された。
もっとも、狩人2の闇討ちが通用するような人間では、自分と戦ったところで結局は一方的な惨殺になる。
彼は斬人の方法として、狩人2のやり方を認めておらず軽蔑してもいた。
そしてそれが ある程度の腕を持つ者には全く通用しないことも知っていた。
余力を残しつつ1番目の狩人を撃破し、なおかつ二番目の闇討ちを油断無く返り討ちにできる獲物。
つまり久々に上質な獲物という事になる。
最近は一方的な惨殺に渇きを覚えていただけに、彼の胸は高鳴った。
・・・が獲物は一向に現れる気配が無い。
さっきの悲鳴が二番手の狩人のものだったのは間違いない。
とすると或いは―――
狩人3「相打ちか・・・」
忌々しげに舌打ちをした。最初に闇討ちで致命傷を負わされながらも、最後の反撃で狩人2を倒したとしたら・・・
多少骨のある人間なら有り得ないケースではない。
しかし自分にとっては一番興ざめな終わり方である。
この憤懣を抱えたまま自宅へ帰れるか思案をめぐらせていたその時―――

ぽたり

剣士の感で即座に反応して後ろに飛び退いたところに一滴、水滴が落ちた。
なんだ水滴かと息を抜こうとした矢先、その水滴が落ちたところ―――数瞬前まで自分のいた場所へ突然人間大の影がもの凄い勢いで降ってきた。
そのままその場に留まっていたら頭上から奇襲を受けていただろう。
狩人3の驚愕を他所に上から落ちてきた「それ」は、ぬちゃりと嫌な音を立てながらゆっくりと首をこちらへ向けた。
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狩人3「な、ななな、何だ貴様はぁっ!1!!!」
無駄な問いとわかっていても声を上げずに入られなかった。
漏れ様「ブシュルルルゥ・・・ニンゲン・・・ユルサナイ・・・」
ゴーグルの奥にある瞳が鈍く光った。
狩人3「ば、化け物!1!!!111」
そういうと急に化け物はしゃきっと姿勢を正し、指でゴーグルをついと上げた。
漏れ様「化け物とは失敬な。漏れ様はれっきとした人間…に…ニー…ニンゲン…ユルサナイ」
狩人3「だからそこで人間やめんな!つうか人間はそんな粘液に包まれてねえ!!」
漏れ様「漏れ様多汗症なんすよ^^;」
狩人3「どう見ても汗じゃねえだろその粘液はぁあああっ!1!!」
狩人3は悲鳴にも似た叫び声をあげている自分に気がついた。
こんな姿を見たら、普段の彼しか知らない友人知人はどんな顔をするだろうか。
漏れ様「ああ、それは漏れ様乾燥肌なんでスキンクリームを」
狩人3「さっきと言ってる事矛盾してないか…」
この調子ならこの化け物はメリケンサックとかも握りこんだりしているかもしれない。
すっごい滑るよ!と主張したところでレフェリーは止めてくれないだろうし、そもそもいない。
漏れ様「それはともかく無辜の民を己が欲望のために殺める所業…許せん。
    この漏れ様が成敗してくれる!」
狩人3が頭の中を整理しきる前に、化け物は一足一刀の間境を越え、するするとこちらへ間合いを詰めてきていた。
何時の間にか化け物は脱皮ズボンを脱いでいる。
狩人3「ち、近寄るなぁっ!」
パニック状態で間合いも剣の振りも滅茶苦茶になっていることもあってか、斬撃を送るも切り傷一つ負わせることができていない。
そうこうしている間に化け物の顔は(半笑いで)吐息のかかる距離にまで迫っていた。
漏れ様「男は度胸。何でも試してみるのさ。」
狩人3「(そういえば…人を斬る練習はこれまでしてきたけど、化け物を斬る練習は・・・)」
狩人3は全てを諦め、その場にへたりこんだ。
目の前にはどアップのおいなりさん。
彼の思考はそこで途絶えた。

そして、塔の中に三度目の喘ぎ叫び声がこだました。


狩人3「アッ―――――――――!1!!1!!」




(後編に続く)


【補記】
長くなったので久々の三部構成。
ちなみに頭をべちべち叩きながら予想する人はたまに渋○のWI○Sに出没する、
実在する人物です。

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