第8話 ヒーロー来たりて 雷雲は去る(後編)

ゲートを抜けると、魔界だった。
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眼前に広がった光景は雷鳴轟く澱んだ空と溶岩の海、あちこちに串刺しにされたり吊り下げられた何か生き物の屍骸。
これでもかっていうくらいの魔界だ。
ミド「大丈夫?」
心配して声をかけてくるミド君に曖昧な笑みで答える。
ミド「口で説明するより実践した方が早いからとりあえずついて来てね。
   途中に居る敵は見敵必殺で。」
漏れ様「おkwwwwwwwwwwwwwwww」
この計らいは今の漏れ様には正直ありがたかった。
実際この世界に来てからというもの、実戦らしい実戦をしていない。
この世界ではどのくらい闘えるのか手応えを確かめるのに丁度いい。
少なくともミド君がいるから死ぬこともないだろうし。
そうこう言っているうちにこちらを見つけたのか、岩場の陰やらあちこちから魔物が続々と湧き出てきた。
ミド「さ、まずはレベル1ってとこかな。」
背にさしてある刀をすらりと抜いてミド君が楽しそうに微笑んだ。


雑魚の群れを掻き分け掻き分け、漏れ様達は大きな塔に辿りついた。8b-2.jpg
どうやらここの雑魚敵はヴァナでは前半の「楽な相手」レベルなようだ。
漏れ様でも普通に戦えたし、いい準備運動になるくらいだった。
ミド「大体オブリビオンではこういう塔の上にSigilStoneが置かれてるから
   よく覚えておいて。複数建ってる場合は、一番大きいのか真ん中に
   位置するやつが大抵アタリかな。」
説明しながら扉に入りかけたミド君がふと何かを思い出したように振り返った。
ミド「あ、そうそう。塔の中は流石に敵も強くなってきてるから気をつけてね。」


塔の中へ入ると、確かに敵がこれまでの使い魔みたいな小型のものから、大きめの人型へ変わった。しかも各々がゴツイ武器や防具で武装しており、中には召喚士もいたりして厄介さが増している。
奥に進むにつれ、敵の数やエンカウント率も次第に増え大乱戦の様相を呈してきた。
ミド「もうすぐ塔の頂上だよー頑張ってー」
こちらに向かって喋りながらもミド君は悠々と片っ端から魔物を斬り捨てているが、漏れ様は流石にそうはいかない。
急に「楽な相手」から「強そうだ」くらいにランクアップしたようなもので、ミド君の刃を逃れ、こちらへ向かってくるやつを一体一体必死に倒していく。
そんな中、漏れ様は不意に魔物の一撃をもらってよろめいた所を溶岩の池へ突き落とされた。
漏れ様「アッー!」
ミド「ザイモクさん!」
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やばいwwwwwこの状況はシコルスキーでも助からないwwwwwwwwwwwwww
えーと、漏れ様飛行石は持ってなかったよな?・・・・・
・・・
・・

ひょっとしてこれ死亡フラグ?wwwwwwwww
時既に手遅れか。漏れ様はギュッと目を閉じた。
と、急に重力が反転したような感覚の後、思ったよりも軽い衝撃に恐る恐る眼を開くと漏れ様は通路の上に落っこちていた。
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漏れ様「あれ?助か・・・った?」
しかし、代わりにミド君の姿が消えている。
周囲には魔物の屍骸しか見当たらない。柵の下を見てもあるのは溶岩の池。
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漏れ様「(そういえばあの時・・・・)」
落ち着いて網膜に焼きついた映像を頭の中でゆっくりと再生した。
漏れ様を突き落とした魔物をすれ違いざまに斬り捨てるミド君。
そしてそのまま落下しつつある漏れ様の黒タイツを引っ掴んで上へ放り投げ、彼はその反動で下へ・・・
嗚呼、まさかやっと出番が回ってきたと思ったミド君が、第10話を迎える事無くもうご退場とは。やはりこの活劇では中の人の意向でIKEMENには悉く死が用意されているのか・・・
随分キャラメイクに時間かかってそうな顔だったんだけどなあ。
呆然とした後、漏れ様の出した結論は一つだった。
漏れ様「漏れ様がやるっかないよな・・・」
せめてゲートを閉じるという目的だけは果たそうと、漏れ様は先へ進んでいった。

ミド君が「もうすぐ」といっていた通り、少し進むと大きめの広間に出た。
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あれだけ大量に出てきた敵もこの広間には全く姿が見えず、閑として静まっているのが逆に不気味だ。中心部には妙に圧迫感のする、巨大な火柱のようなものが昇っている。
それを囲うように続く毒々しい造形の階段を上っていくと、火柱の上部に来たらしい。
火柱の中にいつかお嬢に見せてもらったあの石、そしてその傍らに佇む異形のマダラ男。
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あれを取って帰ればいいわけだが、インスニ無いしこっそり盗むのも無理っぽいので真正面から勝負するしかない。
漏れ様「悪いけどその石を貰うぜwwwwwwwwwwwwwww」
マダラ男「何いきなり話しかけてきてるわけ?お前ハイスラでボコるわ…
凶悪な形をしたメイスを手にマダラ男は襲い掛かってきた。
強烈な一撃をモロに喰らって吹っ飛ぶ漏れ様。
さらに ついげきの グランドヴァイパで さらにダメージは加速した。
漏れ様はひたすらガードを固める。どうやらコイツはここまでにいた奴等とは桁違いに強い。「とてつよ」どころか「とてとて」っぽいwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
攻撃を受けるたびにガードを通してダメージがくるし、動きの速さ自体も三段階くらいギアが違う。なんとか凌いではこちらも乾坤一擲の一撃を返すが、顔に似合わない華麗なバックステッポでかわされてしまう。
不意にマダラ男の手から閃光が奔り、咄嗟にガードした己の両腕から肉の焦げる嫌な臭いがした。
漏れ様「(魔法!?見失った!)」
激痛に耐えながらも視界から消えた相手の姿を眼が探そうとしたその瞬間、漏れ様は頭部に強烈な一撃を受け倒れた。
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マダラ男「人間にしては粘った方だな。褒美として今宵の晩餐に貴様を喰らってやろう。」
こちらに反撃の余力が無いのを確認すると、マダラ男は背を向けてガチャガチャと何やら道具を餞別している。
おそらく、漏れ様を生きたまま切り刻む刃物でも吟味しているんだろう。
漏れ様「(ここで死ぬのか・・・ミド君、お嬢、ごめんな・・・)」
視界はぼやけ、体に力が全く入らない。漏れ様は我が身を切り刻まれる様を想像して心を凍らせた。
――――――――その時だった。
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???「 (・・・だらしねぇなあ・・・ちょっと代わんな。) 」
脳裏にどこか聞き覚えのある声が響いたような気がしたが、漏れ様の意識は急速に薄れていった。



漏れ様?「痛ってぇなー畜生が。」
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マダラ男が振り返ると、叩きのめした筈の人間が何時の間にか起き上がり、コキコキと首を鳴らしていた。
漏れ様?「・・・つっても片手棍だったら『俺』のヘキサの方が1,000倍痛ェけどな。」
何事も無かったかのように体を動かしている人間に驚愕しつつも、マダラ男は肉切り包丁を置いて再びメイスに持ち替えた。
漏れ様?「こっちは素手か・・・そういえばあいつ最後はモンクでログアウトしてたっけか。」
マダラ男「貴様、まだ立ち上がる余力があったのか?」
その問いに人間は不適にも片眉を吊り上げて鼻で笑う。
漏れ様?「余力?これからが本番だっつの。さっきの分、
      纏めて倍にして殴り返してやっからつべこべ言わずかかってきな。」
さっきまで死に瀕していた筈の男は手招きで挑発さえして見せた。
漏れ様?「もっとも・・・
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倍も殴り返す前にテメェはあの世逝きだけどな!
マダラ男の口から咆哮が上がり再び人間に襲い掛かった。


ミド「―――――――モクさん!ザイモクさん!」
ミド君の呼ぶ声で漏れ様は目を覚ました。
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漏れ様「うん?ああ、漏れ様も天国に来ちゃったのか?」
ミド「大丈夫、二人ともちゃんと生きてるよ。」
漏れ様「え、だってミド君は俺の代わりになって落ちちゃって・・・」
ミド「ちゃんと自分も助かる算段が無けりゃあんな事しないよ。
   ちょっと変な所に着地したから、元の場所まで昇ってくるまで
   回り道になっちゃったけどね。」
漏れ様「あれ?あのマダラ男は?」
そういえば意識を失う前、自分が戦闘中だったことを思い出して辺りを慌てて見回す。
ミド「マダラ男?ああ、君主のドレモラだったらあそこでしょ。」
漏れ様を殴り倒した筈のマダラ男は部屋の隅っこで、ボロ雑巾のようになって死んでいた。
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ミド「君主クラスを倒しちゃうなんて凄いじゃん。」
漏れ様「君主クラス?」
ミド君の説明によるとゲートの中は独立した次元になっていて、そのそれぞれを君主といわれる大ボスが統治しているらしい。
漏れ様「つまりその一人を倒した・・・のか?」
ミド「うん。ザイモクさんって実は強かったんだねー。
  いつも姉さんにやられっぱなしだったのに、ビックリしたよ。」
?漏れ様は首をかしげた。ミド君が倒したんじゃないのか?
彼が倒したのを気を遣って漏れ様の手柄にしてくれてるのか?
とはいえ彼の得物は刀だから、彼が倒したのなら致命傷は斬り傷になるはず。
しかし死体を検めると目の前のマダラ男は明らかに撲殺されていた。
ミド「さ、あとはこのSigilStoneを動力核から奪えば、
   ゲートが閉じて僕らも元の世界に戻れるよ。」
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漏れ様の疑問を他所にミド君はそそくさとSigilStoneを掴んで取り出した。
そして漏れ様達は眩く強烈な光に包まれた―――――――――――


光が晴れて、恐る恐る目を開くと漏れ様達は元々ゲートのあった位置に立っていた。
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違うところといえば、あの巨大なゲートが跡形も無く消えていることと、真っ赤だった空が元に戻っていたことくらいだろうか。
ミド「石も手に入れたし任務完了だね。あとは隊長さん達に任せて僕らは帰ろう。」
漏れ様「ああ・・・」
ミド「ザイモクさん?」
漏れ様「・・・大丈夫だ。城に帰ろうか」

―――――竜の背に乗って心地よい風を受けながらも、漏れ様の心には釈然としない部分が染みのように広がっていった。
一体、誰があのマダラ男を完膚なきまでに撲殺したのか。
そして、あの時漏れ様の脳裏に微かに聞こえた声は誰のものだったのか。

晴れない漏れ様の心とは裏腹に、Kvatchの空からは雷雲が去り日が射し込んでいた。




To be continued...





<次回予告>

漏れ様「うぁーんオ嬢えもォ~ん
お嬢「(ダミ声で)なんだいザイモク太くn・・・って何言わすのよ。」
漏れ様「某所の人が『女ばっかの城に住んでるくせにチョコもらえないの?ダッセーwwwwwwww』っていじめるんだ~」
お嬢「で、アタシにどうしろと。」
漏れ様「決まってますがな。ここは一つお嬢にチョコをつくっていただこうかt」
お嬢は溜息をつくと漏れ様の顔面を鷲掴みにした。
お嬢「あのな、よく聞けや」(ギリ…ギリ・・・)
漏れ様「は、ハイ。」
お嬢「アタシがここの所寝る間も惜しんで研究してるのは
   何処の誰の為なのかな?かな?
漏れ様「も、漏れ様が元の世界へ戻るため、です」
お嬢「そのアタシに今チョコを作れ、と?」(ミシミシ)
万力で頭を締め付けられているかのように頭蓋骨が悲鳴を上げている。
漏れ様「ず、ずびばぜん・・・し、失礼しました。前言撤回します。」
これ以上この部屋に居ると、頭蓋を砕かれそうなので早々に退散することにする。


漏れ様「ノエルさ~ん」
ノエル「あら、どうなさいました?」
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漏れ様「今日は何日かご存知ですか?」
ノエル「ええ、2月14日ですね。お部屋にカレンダーがありませんでしたか?」
漏れ様「そうじゃなくて・・・2月14日はバレンタインじゃん?キャッ!言っちゃった!」
ノエル「気持ち悪いですね・・・・で、それがどうかしましたか?」
漏れ様「いや、だからチョコくれないかなと」
ノエル「は?何でですか?」
漏れ様「バレンタインは世の女性が男性へチョコをあげる風習で・・・」
ノエル「で?」
漏れ様「男性の漏れ様としては女性のノエルさんからチョコが欲しいなと・・・」
ノエル「で?
漏れ様「あ、あの、ノエルさん?」
ノエル「で?
漏れ様「・・・もういいッス・・・サーセンwwwwwwwwwwwwww」

あと貰えそうな人つったらシャーリーさんだけか。
チョコ・・・もといシャーリーさんを探して厨房やバラックを駆けずり回ったものの、彼女の姿は見当たらない。探していると地下のプールでミド君に出会った。
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漏れ様「ミド君、シャーリーさん知らない?」
ミド「ああ、シャーリーさんだったらブラヴィル柔術道場の合宿で
  一週間くらい帰ってこないよ
終 わ っ たwwwwwwwwwww

日もすっかり落ちた頃、ガックリ肩を落として自分の牢獄へ帰る漏れ様。
漏れ様「はー・・・今年収穫無しか・・・ん?」
机の上に置かれた見覚えのない包み。
漏れ様「ここ、こここここれわわわわわわわわわわ!!11!!!18b-18.jpg

この甘く芳しき香り・・・
Cho・co・la・te!!!!!!11
チョオオオコレイトォオオオオオオッ!1!1111!!!1


・・・しかし一体誰が?


お嬢「ノエルー、アロエの葉持ってない?実験失敗して火傷しちゃった。」
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ノエル「はい、ありますよ。お嬢が実験を失敗されるとは珍しいですね。」
お嬢「慣れない事はするもんじゃないわねー」
ノエル「?」




ザイモク様はどうなってしまうのか1!1!1
次回を待て!11!1!!1

今回から美少年(ミド君)が主人公と聞いてやってきました!(え?
江頭さんも最後の活躍ご苦労様でした(>_<。 これからは魔界の地で安らかに余生をお過ごしください(-人-)
・・・ウソです、冗談です。これからも監獄送り期待して見守っていきますw
そしてお嬢からのチョコ!ちょっ!ホントにどうなってしまうのか?!(お嬢は)
[ 2008/02/24 00:23 ] [ 編集 ]

>れらさん
漏れ様も美少年なので主役交代は回避した。
ちなみにあのチョコは多分ローサンからの贈り物です。
[ 2008/02/25 23:36 ] [ 編集 ]

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