第8話 ヒーロー来たりて 雷雲は去る(前編)

ここはフォレスター博士ことお嬢の城、最上階マスタールーム。
現在の主である自分の研究室兼寝室で、お嬢は不眠のまま朝を迎えていた。
詰めていた研究がようやく一段落着いたのか、それまで読んでいた書類の束を机の上に放り出し大きく伸びをする。
一瞬、ふと何か小さな気配が目の前を過ぎったので見下ろすと、赤い糸の巻きついた縫い針が卓上の帳面に刺さっていた。
それを見て既に疲労の色が出ていた表情が一層曇る。
お嬢「(何かあったわね…)」
これは兼ねてより「彼女」が主であるお嬢に直接かつ至急話さなければならない用件があるときのサインだった。
一息ついてお嬢が指を鳴らすと天井から影が一つ、降ってきた。
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お嬢「何があったの?」
シャーリー「Kvatchに大型のゲートが開きました。」
お嬢「大型の?」
シャーリー「はい。そのため城はほぼ壊滅状態。多数の犠牲者、避難民も出ています。」
お嬢「・・・聞かなくても察しはつくけど役立たずの城兵達は?」
シャーリー「民間人避難のための防衛線を敷くので手一杯な模様です。
      城兵にも大分犠牲者が出ていてそれも長く持つかどうか・・・」
お嬢「急ぐ必要があるわね。ご苦労様。それと・・・」
天井裏へ戻ろうとしていたシャーリーが動きを止めた。
お嬢「あんたちょっと太った?こないだ借りたボディスーツ、ちょっと緩かったわよ。
   …特に胸が。
シャーリー「は;申し訳ございません。」
お嬢「ま、まあいいわ。戻って頂戴。」
ひらひらとお嬢が手を振った時には既にシャーリーの姿は天井裏へ消えており、お嬢もまた彼女の方に目を遣る事も無かった。
お嬢「(ついに奴さん達、遠慮無い場所にゲート開くようになってきたか…)」
顎に手をあてて少し考えた後、お嬢は執事を呼ぶために卓上のベルを鳴らした。

無事釈放されて城に戻るや否や漏れ様はお嬢の部屋へ呼び出されていた。
シャーリーさんの一声で何の手続きも無く即釈放ってどういう事よwwwwwwwwwwww
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お嬢「釈放されたばかりで悪いけど仕事よ。オブリビオンゲートの事は以前話したわね?」
漏れ様「ああ、魔界の中へ入って石を取って来いってやつ?」
お嬢「そう。そのゲートが実際にKvatchって街のど真ん中で開いたの。
   で、今回は弟…ミド君と一緒に現地へ行って、ゲートを閉じてきてもらうわよ。」
漏れ様「いきなりかよwwwwwwww心の準備がwwwwwwwwwwwwww」
ミド「よろしく、ザイモクさん。」
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お嬢の隣にいたウホッ!いい男…が軽く会釈をした。そういえば彼とちゃんと対面するのはこれが初めてだな。
一見虫も殺さぬような美少年だが、シャーリーさんの例もある。この城の住人にまともなのがいる筈が無い。
お嬢「次からは一人で行ってもらうから、ちゃんと要領を覚えてきてね。」
後ろで控えていたノエルさんが一瞬ぎょっとして何か言おうとしたが、結局何も言わなかった。
ミド「ここからKvatchはちょっと遠いから・・・現地には転送ポータルかな、姉さん。」
お嬢「今回はダメね。城が瓦解してしまってるらしいから
   ポータルの転送先もどうなってるか分からないし。」
ミド「じゃあ・・・アシを使うしかないね。」


 漏れ様は城の中庭へ案内されたが、そういえばこの城で馬らしき姿は見た事が無い。
漏れ様「アシ・・・って何か乗り物があるの?」
ミド「ああ、普段は放し飼いにしてるからね。今呼ぶよ。」
呼ぶ?疑問符を浮かべている漏れ様をよそにミド君は口笛を吹いた。
少しして急に空が曇ったので見上げると、上級には巨大な影が・・・・
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羽風を巻き起こしながら降りてきたのは一体の黒い竜だった。
漏れ様「でかっ!何コイツwwwwwwwwwwwwwwww」
ミド「何・・・って僕のペットだけど。おーよしよし」
巨大な竜は巨体に似合わず軽やかに着地すると、ミド君に顔を擦り付けた。
ミド君が撫でると猫のようにグルルと喉を鳴らしたり、仕草だけはまるで飼い猫のようだ。
不意にじゃれていた竜の鼻がぴくりと動き、竜の目線が何故か漏れ様にタゲ固定されたwwwwwwwww
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漏れ様「ちょwwwwwなんかこっち見てヨダレ垂らしてるんですけどwwwwwwwww」
ミド「ダメダメ、この人はトモダチ。餌じゃないよー。」
餌ってwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
なだめるように竜の鼻面をさする。でもタゲ剥がれてないwwwwwwボスケテwwwwwww
ミド「じゃあ姉さん、行ってくるよ。」
お嬢「気をつけてねー。」
ミド君は未だにこちらを凝視している竜の背にひらりと器用に跨った。
漏れ様もおそるおそるミド君に手を引かれてその後ろに乗る。竜のヨダレは一応止まっていた。
そしてミド君が鞍帯を軽く蹴ると、竜は両翼を羽ばたかせ大空へと飛び立った。



ノエル「お嬢、よろしいのですか?」
竜に乗った二人の姿が見えなくなるまで見送った後、早々に部屋へ戻ろうとするお嬢をノエルは呼び止めた。
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お嬢「何がよ。」
ノエル「いきなり彼を御曹司と同行させるのは危険すぎるのでは?」
詰め寄るノエルに対し、お嬢には余裕の色が伺える。
お嬢「大丈夫よ。」
事も無げに言ってのける。
ノエルは反駁の言葉がのどまで出掛かったが、彼女にとってお嬢の言葉は絶対である。
大丈夫、と言われれば大丈夫。そう納得するより他無いのだ。
ノエル「・・・わかりました。しかし今後は本当に彼を独りで行かせるおつもりですか?」
お嬢「ゲートの一つや二つ、ソロで閉じれないようではこの先命がいくらあったって
   足りないわよ。
   まあ、今回はそういう未知数な点の見極めも考慮に入っているから安心して。」
ノエル「恐れ入ります。」
恭しく一礼をして、ノエルは持ち場へ戻っていった。


漏れ様「スゲェな。まるで小型の飛空艇だ」
久々に空を飛ぶ感触に漏れ様は思わずつぶやいていた。
ミド「飛空艇?」
漏れ様「この世界には無いんだったか・・・漏れ様の世界にある、空飛ぶ船だよ。」
ミド「空飛ぶ船?そんな凄いのがあるんだね。乗ってみたいなあ。」
漏れ様「帰ったら姉ちゃんに作ってもらえばいいんじゃね?」
ミド「うーん、どうかな・・・あ、見えてきたよ!」
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ミド君の指した先にあるのは、真昼なのに真っ赤に染まった空、半壊した城と城壁だった。
竜はそこから少し離れた所に築かれたバリケードの近くに着地した。
驚いた衛兵が何名か走ってきたが、背に乗っているミド君を見るやホッと安心したようだ。
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衛兵「ミド様!どうしてこちらへ?」
どうやらKvatchでは彼の顔は知られているらしい。
ミド「加勢しに来たよ。状況はどうなの?」
衛兵「はっ、城門前に出現したゲートに連絡系統が分断され、
   城内の様子はわかりません。
   ですが、まだ城内や教会に衛兵、民間人が多数残っているものと思われます。」
ミド「わかった。隊長さんの所に案内して。」
衛兵「かしこまりました。こちらへどうぞ。」
漏れ様達は衛兵に案内されるままついて行った。
ミド「隊長さん」
隊長「おお!これは・・・ご無沙汰しております」
彼の姿を見て、絶望的な顔をしていた隊長にも一転して安堵の色がみえた。そこまでこの少年が信頼できるんだろうか。
漏れ様「なあ…おたくらあの美少年とどういう関係?」
こっそり衛兵に聞く。
衛兵「ミド様は昔この近くの山でお師匠様と剣の修行をされていた事がありましてね。」
聞けばミド君はそのお師匠様と一緒に全国を人助けしながら行脚してたらしい。
だから各国には少なからず彼等の恩恵に与った人間がいるのだそうだ。
漏れ様「ほうほう、それでは剣の腕も確かなのかね?」
衛兵「確かも何も剣聖と呼ばれた方に唯一弟子入りを認められ、
   幼少の頃から手ほどきを受けられていた方ですからね。
   あの当時でさえ大の大人が束になっても敵いませんでしたよ。」
漏れ様「ふーん、あんな美少年がねえ。」
衛兵「ああ、ミド様は当時から可憐な少年だった・・・」
うっとりと恍惚の表情を浮かべながら語る衛兵。こいつその気でもあるのかwwwwwwww
一方、ミド君は隊長やその周りの衛兵にてきぱきと指示を出している。
ミド「衛兵の皆は手分けして避難民の保護に集中して。ゲートは・・・」
言葉を切ってミド君がちらりとこちらを見た。
ミド「僕達で閉じるから。」
隊長「そちらの・・・方とですか?」
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ようやく隊長は漏れ様の存在に気付いたらしい。あからさまに怪訝な顔をしている。失敬なwwwwwwwww
ミド「僕の仲間だよ。」
隊長「でしたら大丈夫ですね^^」
何よその豹変振りはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ミド「隊長さん達は準備いい?」
隊長「はい、いつでも。」


漏れ様はミド君と一緒にゲートの方へ近づいていく。
ミド「僕らがゲートに入って暴れれば、敵さんはゲートの外へ戦力を出せなくなる。
   その隙に城内で取り残されている人たちを救助してもらう。以上ね。」
漏れ様「おkwwwwwwwwwwww」
ミド「むっ」
低く唸るとミド君が急に飛び出した。
一瞬何かがきらりと閃き、悲鳴ともつかぬ怪鳥音が上がった。
そして次の瞬間にはゲート付近にいた異形の怪物が、全て血煙を上げて消し飛んでいた。
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ミド「露払い完了、っと。」
どうやらこの姉にしてこの弟あり、という事らしい。剣聖とやらの手ほどきもダテじゃないようだ。

漏れ様達はゲートの前に立った。
漏れ様「(これがオブリビオンゲート…)」
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禍々しく開かれた異界への門は並々ならぬ妖気を発し、周囲の空の色までも変えてしまっている。
ミド「じゃ、行こうか。」
漏れ様「お、応。」
思い切って漏れ様は大きく口を開けている門へ飛び込んだ―――――――――。


(後編に続く)


<次回予告>8-13.jpg

ザイモク様は無事帰還してバレンタインを迎えられるのか!?
次回を待て!!11!1!!

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